ゲージ反復性及び再現性 (GR&R)とは?
一般的にGR&Rとして知られるゲージ反復性および再現性とは、測定装置の精度と偏り、および測定手段として使用される試験機のその後の有効性を測定するための工程管理(SPC)に使用される統計的手段です。その他の通り、GR&Rには、同じ方法で繰り返される試験のもとで一定の結果(精度)を得られるゲージの性能に関連する反復性と、試験を行う作業者(作業者の偏り)に関わらず反復結果を提供できるゲージの性能である再現性の2つの構成要素があります。
ロックウェル硬さ試験のGR&R検査は、試験機の正確さと全工程に影響する可能性のある試験機の偏りの測定において有効です。ロックウェル試験のGR&R評価は複雑な要因を伴いますが、これらが理解され説明されると、GR&R評価は有益な作業データを提供します。マイクロメートルまたはキャりバーのようなたくさんのタイプのゲージにより、比較的簡単に試料の偏りなしでGR&Rの性能を試験できます(既存値のゲージブロックを使用して同じブロックで繰り返し測定し、反復性を計算します)が、ロックウェル試験機のGR&R評価は固有の難しさを引き出します。ロックウェル試験が同じスポットで行われることはないため、主要障害物は試験試料の偏りです。結果として、硬さが完全に均一な材料はないため、偏りを取り入れます。GR&R計算を行う場合、一般的にこの現象は作業の許容値を数学的解析に取り入れ入れることで説明されます。
目的
ゲージ反復性および再現性(GR&R)検査を行う目的は、硬さ試験機の偏り(装置の偏りまたは反復性とも呼ばれる)と作業者間の偏り(試験官の偏りまたは再現性とも呼ばれる)が、どの程度の作業許容値を占めているのかを判断することです。これらのソース(反復性および再現性または R&R)の組み合わせが作業許容値の大部分を占める場合、作業者はロックウェル試験機で部品の硬度を測定しているのか、単に乱数を生成しているだけなのかを確認できません。統計的工程管理(SPC)が効率的に機能するには、複合偏差を作業許容値の10%未満(GR&Rが10%未満)にする必要があります。GR&Rが10%から30%の間のロックウェル硬さ試験機は暫定基準の許容範囲ですが、GR&Rが30%を超える試験機はSPCに使用できません。
GR&R を行う理由
毎日使用される30の試験機に対してASTMが数年前に行なった調査で、調査した試験機の90%が試験ブロックを使用した通常の間接的検証をパスしたにもかかわらず、直接検証をパスしなかったことが分かりました。これらの試験機がすべてとは言わずともほとんどの許容差を使い切っていたことは間違いありません。これにより、試験機の不確実性の判断に使用される場合、計算の間違いが非常に増えることになります。GR&Rを行うことで、お使いのシステムがどの程度ロックウェル硬さを読み込んでいるのか、直接検証のような追加検証を行う必要があるのかについて多くを知ることができます。今使用しているほとんどすべての試験機は、製造されてから基本機能(力、深さ測定、時間サイクル)の検証を受けていません。出荷工程だけで何度もこれらの精巧な機器の問題を引き起こす可能性があります。ASTMは、試験機がユーザーに配送された後の試験力と変位測定システムの直接検証は要求していません。40年以上使用されている試験機を見ることも珍しくありません。つまり、試験中に加えられる力と、深さの測定に使用する装置は、40年間その精度を確認されていないことになります。試験力を加えるために多くの場合バネを使用します。バネは時が経てばその力を失うことは知られていますが、基準ブロックを使用する間接的な検証だけが機器の測定のために定期的に行われているため、40年後に実際の力が本当はどのくらいなのかを誰も知りません。有能なサービスマンが、ASTMの完全な許容差を使い切る「ブロックの読み込み」のための試験機の調整に生涯を費やしています。ロックウェル硬さの通常の測定目盛りの単位はたった2 µ(深さが約0.002 mmまたは0.00008インチ)であり、このような精密な測定には極めて正確な測定システムと同じくらい重要な管理作業が必要になるのは明らかです。準備や実施手順が適切ではないロックウェル硬さ試験や頻繁に調整や保守が行われていることが保証できない試験機は、正確さに欠けたり、読み取り値が誤っていたりするため、試験された材料が使用されている製品の性能と健全性に有害で、最悪の結果をもたらしかねない規格外の製品の生産や出荷につながるおそれがあります。機械性能の誤りがすぐに製品の欠陥につながることが明らかな場合、GR&Rはお使いの機械がどの程度機能しているかについて測定可能で意義深い評価を提供できます。
試験機の反復性及び再現性の理解
お使いの試験機がどの程度機能しているのかについて定量的知識のあるユーザーはほとんどいません。試験機の反復性および再現性はたいていGR&R検査によって判断されます。GR&R検査を定期的に行うことで、機器の性能を確立し監視することは簡単です。一般的なGR&R検査ではすぐに作業者の影響を含め試験機の短期的及び長期的性能を確立できます。
完全または長期のGR&R 検査方法には、10の異なる試験ブロックと、各ブロックごとにそれぞれ3つの試験を行う3人の作業者が含まれます。合計して90の試験によって、試料許容値のどの部分が試験機の不正確さに占められるかが分かります。短期または最低限のGR&R検査では、10の異なる試験ブロックで、1人の作業者が各ブロックごとに3つの試験を行うため、合計して30の試験が行われます。2つの方法をロックウェル試験機で比較すると、最終結果でごくわずかな違いが示されます。
工程
前述の材料の偏りのため、生産部品では特に、GR&R試験を標準試験ブロックで行い、できる限り材料の偏りの影響を抑える必要があります。計画的に試験ブロックをできるだけ均一に製造することで、最高の材料にしてGR&R試験を行います。完全または長期のGR&R方法では、3人の作業者がそれぞれ、ブロック #1 から始めてブロック#10 まで連続して各ブロックにつき1つの硬さ試験を実行し、最初の試験を完了します。試験ブロックに特有のランダムな不均一性を補うために、作業者は各ブロックの一連のくぼみがお互いにできる限り接近して繰り返されていることを保証する必要があります。この工程は、各試験ブロックで9回、合計で90の試験のうちの3つの完全試験で繰り返されます。
計算
ロックウェル試験機でのGR&R計算は、基本的に工程の許容範囲の機械と作業者の偏りを組み合わせます。偏りが低いまたは工程の許容範囲が比較的広い場合、% GR&Rも低くなります。反対に、偏りが高いまたは工程の許容範囲が比較的狭い場合、% GR&Rは高くなります。分析で各作業者の読み取り範囲を計算し、それぞれの平均範囲を作成します。さらに各作業者の平均試験値も決定されます。このデータは完全なGR&R結果の作成に使用されます。
許容値
計算面での工程の許容値は比較的簡単で、部品の硬に対して工学上の仕様から直接あてはめられます(例えば、42~48 HRCの硬さが必要な部品の合計の許容値は目盛り6つ)。例えば、実際の部品を測定しても機械の適合性については何もわからないため、機械と作業者の偏りを試験ブロックの許容値と比較することは重要ではなく、GR&Rの計算は工程の許容値にのみ関連することに注意してください。試験ブロックの許容値は機械の正確性を保証するものであり、その反復性を保証するものではありません。
変動
偏りの計算は少々不明瞭に見えますが、すべての計算により平均範囲値と作業者の違いをシックスシグマの近似値(全データの標準偏差の6倍)に変換します。シックスシグマとは機械の全偏差に対する統計的記述です。機械が正常に機能していないと仮定して、シックスシグマでは、提供されたブロック(GR&Rの場合は10ブロック)で行われたすべての試験の99%以上がこの範囲内になります。ある意味で、その硬さレベルでの機械の不確かさでもあり、つまり読取りでは、実際の硬さ値は最大で3シグマ加算または3シグマ減算します。
結果
ロックウェル試験機の中には高性能のゲージの反復性および再現性に役立つ機能を持つものがあり、中には生産されたすべての試験機がGR&R 評価を受け、規定のパーセンテージ以上のGR&R 性能でこの試験を完了するまで出荷しないようにしている製造会社もあります。検査の証明は、一般的に各試験機から発行されるGR&R 証明書で提供されます。高度なGR&R性能の要因には以下のものが含まれます:
- 閉ループ負荷制御:負荷セルは、負荷セルと圧子からの評価方法を提供します(機械部品の摩耗や抵抗はループ内で補正されます)。閉ループ制御は力の適用において最も正確な形式を提供します
- 抵抗による誤差を取り除くため、圧子を負荷セルに取り付けます
- 力測定装置と奥行測定スケールが単軸配列の圧子に直接合うように設定されています
- 昇降ネジの取り外し(修復不可能な偏差のソース)
- アナログではなくデジタルの読み出しを使用して、解像度を.01に上げます
GR&R はロックウェル試験機の性能の測定には便利ですが、推奨される通常ブロック/間接的検証作業の代わりにはなりません。試験機に対して毎日、間接的な性能検証を行うことも重要です。スケールを、規格どおりの仕様の基準ブロックや基準片で検証します。可能な場合、スケールを変える都度、また、シフトを始める都度、機器を検証することが推奨されます。基準ブロックは、試験する材料に相当する範囲のものから選び、較正する側のみ使用します。検証作業で、全部で5回測定をとります。測定値は基準ブロック上および基準ブロック仕様に記されている許容範囲でなければなりません。検証結果が不合格である場合、適切な調整または修理を行うまで、作業からその試験機を取り除きます。試験機を継続的かつ良好な状態で使用し、ロックウェル試験の精度条件を試験機が満たしているのを保証するために、保守と、資格を持った団体による検証が、不可欠です。ASTMは、ロックウェル試験機を年に一回保守および検証すること、酷使している場合や用途が極端である場合はもっと高頻度に保守と検証を行うことを推奨しています。検証は、認定検証機関により行われなければなりません。結果は、ASTME18「ロックウェル試験方法」に基づき、それに則って報告されるものとします。
ゲージの反復性および復元性は、ロックウェル硬さ試験機の性能レベルの評価には、間違いなく便利で有益なツールです。材料試験、品質管理と合否判断、各材料の性能における重要で有用な手段として使用される硬さテストで作成されたデータに応じて、部材の熱処理、構造上の健全性、品質を検証し、わたしたちが毎日使う物品に用いられている材料が工学的に正しく設計された、効率的で安全な世の中に貢献するかどうかが判断されます。装置の性能を確認することに加えて適切な技法、手順、基準の厳守によって、ロックウェル試験の正確さと有用性に大きく貢献します。
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